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大野 哲幹

GENOMASS/ゲノマス

Title:GENOMASS/ゲノマス
Material:木材、モデリングボード、他
Size:H600 × W600 × D600 mm

今日、我々はスマートフォンを用いて、その場にいながら買い物をすることができる、気ままに意見を発信することができる。テクノロジーは人々に自由を与え、人々は強欲になった。

この建築は、3m×3mのグリッドに3m×3mのルームユニットを嵌め込むことで構成される。住人はスマホで自らの部屋を購入し、ユニットの配置や組み合わせを自由に決定することで、この建築は住人自身によって形造られていく。

物価が高騰している現在に、スマホを介した安価かつ簡易的な住居の獲得は、人々の欲望を大きく加速させることだろう。

人間一人一人の”住”に対する憧れを欲望のままに具現化することで生成されたスラム型モンスター建築は何の規則性も無く、無秩序に増殖する。そこには「日当たりの良い場所がいい」「光が入って来て欲しい」「上の階層に住みたい」「あの人の近くは嫌だ」などといった人々の我儘が反映される。しかし、それこそが建築に命を与え、一見無秩序に見えた増殖という形態は成長、進化へと転ずる。

この建築は、人間の憧れや欲望、そして住人一人一人の人生の物語をエネルギーとして成長し、まるで命ある生命体のように姿を変えながら、いずれ町を喰らい尽くし、都市を覆い尽くす。

大野 哲幹

Artist:大野 哲幹 Toshiki Ohno

近畿大学大学院 システム工学研究科 建築意匠研究室 所属

これまで建築は受動態として、能動態である人間や自然環境を受け入れてきたが、建築物自体が能動的に都市や町に働き掛けることが、様々なものが交感し合う未来社会でも適応し得る建築の在り方である。全ての生命体は能動的に活動し、自ら合理性や適性を見つけ出し、環境へと順応してきた。システム化された未来社会では、建築もネットワークとリンクする単なるプロットの一つに成りかねない。ハウスメーカーが勢力を伸ばしていることも、命ないシステム型建築の拡大を表しているだろう。そうはならない上で、未来社会とも調和できる建築の提唱として「命ある生命体建築」をテーマに研究を進めている。

そして、このテーマの起源は、私が怪獣やモンスター、SFを幼少期から愛していたことにある。いつだってそれらは、私の中の「かっこよさ」「美しさ」といった価値観の母であった。

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Instagram:https://www.instagram.com/jericho_field