su-nosuke

深海ーFUKAMIー

Title:深海ーFUKAMIー

Material:ダンボール、シャープペンシル

東日本大震災から10年の区切りを迎えた時、日常の中に消えつつある様々な記憶がまた燻り出されます。あの日の破壊と再生は単なる序章にすぎなかったことに、今私達はようやく気付くのです。穏やかだった心はまた激しく揺り動かされます。心にセットされた時限装置はカチカチと秒針を鳴らしながら、私達の悲哀感や絶望感を無用に呼び起こします。仕掛けられた罠に翻弄する私達をモンスターはほくそ笑みながら傍観しています。

ひとりの男が壊れながら深海へと落ちていきます。あの世とこの世の狭間で絶望を抱きながら希望に天を仰ぐ心情に心を重ねる時、重い感覚から軽い感覚へと変化していることに気が付きます。それでもまだ心の動揺は残ります。あの日モンスターは目に見える世界を見せるだけでなく、私達の心に目に見えない罠を巧みに仕掛けたのです。

津波で流されたダンボールも避難所で生かされたダンボールもどちらも同じ震災の象徴です。解いたダンボールの破れや糊跡は、その役割を終えた跡であり、新たな役割が始まる印でもあり、ありのままの姿を表しています。ダンボールに染み付いた様々な感情は、私達の忘れかけた当時の思いを呼び起こすきっかけになるでしょう。遠くに眺める褐色の世界に目を凝らしてみれば、セピア色した写真のように黒鉛の線が次々と浮かび上がります。近づく程に見えなかったものが見えてきます。カメラのレンズを合わせるように、過ぎ去り日々の遠い記憶もそんな風に思い出すものなのかもしれません。そして私達はようやく気付くのです。モンスターの本当の恐ろしさを、今私達は知ることになるのです。

Artist:su-nosuke
1973年 宮城県塩竈市生まれ
1996年 東北学院大学工学部土木工学科 卒業
2010年 ペンドローイング創作活動 開始

Instagram:https://www.instagram.com/pen_drawing_black_white/