田中 文

悶(もだえ)
石粉粘土、針金、石(グランディディエライト)、レジン、金属(真鍮)、アクリルガッシュ

この作品で 3.11 から今現在の私の心境を表現しました。

目元以外を手のひらで覆い隠された左顔は、’ 強くあらねば、弱味をみせてはならない ‘ と感情をひた隠すいわば表向きの私です。逆に、口元を剥き出しにした右顔は、’ 怒れるものなら怒りたい、悲しみたい ‘ と感情を露わにした私の本心を表しています。

私の母は宮城の気仙沼の出身で、あの日当時小学生だった私は、祖父母の住む町を貪欲に呑み込んでいった海が夜の闇の中で赤々と燃えているのを、泣き崩れる母と共にテレビ越しに見詰めることしか出来ませんでした。

残念なことに私の住んでいる大阪では震災に関する関心が低く、日常生活の中で心無い言葉や考えを聞いたことも少なくありませんでした。幼き日の私にとって、津波や火災と同じくらい無関心で心無い同級生や教師の方々が恐ろしくてたまらなかったのです。
その思いは今でも拭えていません。

今回、一つのけじめとしてその時の私の心境を形にしようと決意し、それを両手のひらで自分の素顔を隠し、一人悶える怪獣として表現しました。

田中 文 Aya Tanaka
自己紹介
躍動感や、息遣い。そんな生物の命の営みをありありと感じさせる瞬間を捉えた’活きている’作品を目指しております。
そのため、私の作品ではまず針金をベースに実際の骨格を塑像してから、筋組織や皮膚表現を施しています。

受賞歴
2017 
・第 37 回大阪府高等学校芸術文化祭 美術・工芸部門 – 入選
・「Creative Matter プロの手にかかると自分の作品はどう変わるのか !? 」 – 入選 
2018 
・”世紀のダ・ヴィンチを探せ !” 高校生アートコンペティション 2018 – 入選
・TURNER AWARD 2018 – 入選
2019 
・2019・ZERO 展 [ こどもの部 ] – 大阪市教育委員会委員長賞 および 入選