gAo

衝動と欲望の生体展示

Title:生体展示「nukegara」と「umekugaran」

Material:磁器、藍染、アクリルケース、ワイヤー、ステンレス製金具、アクリル

生体作成レポート

《生体作成①》「nukegara」

まず衝動に着目した。自身の衝動的な行動の根元はガランドウ(空虚)だ。
愛や自己実現を求め満たそうと楽しいことを探し動き続ける。
磁土に透かし彫りを施し体内の空虚を表現。
欲求を満たすために動き続ける、追い求める様から触手を体表に多く付けた。
人の心の内面を花や植物の姿に投影し造形。
そして生存本能の象徴として排泄と摂取をイメージした部位を作成した。
陶磁器製品はあらかじめ製作工程を決め計画性を持って製作をするが今回は衝動をテーマに据え衝動的に製作を始めた。まずは270×270×300㎜のサイズの窯に入らなくなる。窯に何としてでも入れようと斜めに倒し支えを作りもう一度窯に入れるが入らない。最後は無理矢理窯に押し込んだ。触手はもげて花は欠けた。
施釉の工程の際は一人では出来なくなったので周りの人の手を借りた。生存本能を象った排泄と摂取の部分の排泄の部位が全て崩れた。失った結果、窯に入り本焼きを経て完成する。
衝動を抑えず行動する姿、崩れていく様はこの世界で生きていく為に体裁を取り繕いながら生きていく心情を表象。
崩れながらも最後に作品としての形を得られた過程は失って得る真理の象徴的な姿となった。

《生体作成②》「umekugaran」

快感を満たす為の原動力に着目した。
性の象徴である女性と男性の特徴として現れる部位を模して混ぜ合わせた体型を考えた。快感を満たしたいという本性を隠しながら社会で体裁を取り繕い生きるための、かわいい姿と生々しい人の姿を合わせることで、相反する感情や考え方を同時に心に抱いている状態を表した。
身体中に空いている穴は全身で呼吸をしている様である。
機械、建築物、鉄塔をイメージして体表を造形し、増え続ける人や社会の欲望と生きる為のエネルギーが混ざり、そこから吸収し行動を続ける状態を表現した。
「nukegara」に持つ花の部位は牙へ変化させた。齟齬が起こり人に食らいつき傷付けてしまう姿だ。
生体は「呻く」と「ガランドウ」を掛け合わせて「umekugaran」と名付けた。

《生体①、②作成を経て》

衝動や本能は生きる為に必要だが一線を越えると他人と自分自身を傷つけ壊していく。欲望のままに進めば自身の存在か周りの存在どちらかが消えるまで壊し続けるだろう。
一線を越えてしまうのは衝動や本能のみに起因するのではなく欲望を持ってしまうからだ。
この世界に生まれた時点で社会の欲望は自分自身の精神、自我の形成に起因する。
自身の欲望は周りの人たちの欲望であるかもしれない。しかし脱け殻でありながらも怪物になり得ず「nukegara」の形が残ったのは周りの人の関わりがあったからだ。
「nukegara」は生きるための衝動、本能、欲望を持っている私自身の姿である。
自身の「怪物」を生まない為には自己を破壊するか自分の状態に気づき思いとどまるしかない。周りの人の存在を製作の体験を通じて改めて感じた。

Artist:gAo

好奇心と自身の空虚を埋めるために製作
道具を使って彫る、削る行為や細かい作業を続けることに幸福を感じる。
人の力には出来ない力に委ねそれを受け取り器という時間に留める製作の手段を模索中。
「人の居場所にある静かであたたかな記憶を見つけ寄り添う」をテーマに据え陶製品を作る