大塚 和也

Objects
デジタルプリント、アルミプレート

「現代の付喪神(つくもがみ)」をイメージして、海岸線に点在する人工物の姿を大きく歪めて
撮影しています。また浮世絵などを意識して縦位置構図を主に使い、太陽と海を生命活動の象徴として捉えて背景にしています。そうして写し出されたビジュアルは、器物にまで命を感じ取る日本人ならではの、まるで奇妙な生きものを思わせるモノになっていると感じています。私はさながら現代の百鬼夜行絵巻の絵師なのだと自負しています。

古来より、日本には 「付喪神(つくもがみ)」 という観念があった。    
日本人は科学的に見て、明らかな生命活動を行っていない物にまで命を感じ取る、非常に豊かで稀な想像力を持ち合わせていたのだ。    
翻って、私の写真はどうだろう?    
太陽と海は文字通り、すべてのものの始まりであると同時にすべてのものの生命活動の象徴でもある。    
だから、この二つを背後に、あるいは中心に従えたこれらの物体は、私が写真の力を通して甦らせた現代の付喪神の姿だと言えるのではないか?    
超広角レンズやフラッシュを多用することで、その形が実際の物よりも大きく歪み変形して写っていることも、器物に手足が生えて勝手に動き回る付喪神の描写になぞらえることが出来ると思う。 私は元々、逆光の海を縦位置の構図で撮ることが好きだった。    
まるで、掛け軸に描く日本画や浮世絵のように。
それがいつの間にか、その手前にある人工物に目が行くようになっていた。    
それは、私自身が上述したような極めて日本人的な感性を持った人間だったからだと考えれば、自分なりに納得がいく。    
つまり、これは日本人でしか撮れない、見ることの出来ないビジョンのひとつの具現化なのだ。
その形の先には、原日本や、更には人という生き物の営みを表すシンボルさえも見え隠れしているように思う。   
さながら、私は現代の百鬼夜行絵巻の絵師になる役割を担っているのだと自負している。

大塚 和也 Kazunari Otsuka
1978年 福井県生まれ
2001年 東京工芸大学芸術学部映像学科卒業
2013年 「shadowtimes vol.38 shadowrecommends」 に選出、掲載
2015年 「HUNGRY ISSUE.5 LIMITED EDITION」 に選出、展示 (渋谷、京都、札幌)
2017年 「ShINC.MAGAZINE-D/01」 に巻頭掲載
2018年 個展 「Objects」 (エプソンイメージングギャラリー epSITE)

https://www.instagram.com/kazunari_otsuka/