su_nosuke

氷水(ひょうすい)

Title:氷水(ひょうすい)
Material:アルミ蒸着フィルム、糊、水性形接着剤
Size:H315 × W230 × D50 mm × 2

本作品は、地震直後に妻を迎えに行く夫が運転中に津波に呑み込まれた瞬間、遭遇したであろうモンスターを表現しています。凍てつく水はまるで氷のようにフロントガラスを突き破り全てを呑み込みました。それは無感情でありながら、冷酷なモンスターの姿です。
 今回使用したアルミ蒸着フィルムは保温シートとして利用される素材ですが、その特性とは異なり冷たい印象を与え、まだ寒い3月の東北の気候や避難所で暖をとる人々の姿を連想させます。

2011年3月11日。地震の揺れがおさまると、向かいの家から男が出てきた。海沿いのカルチャースクールに通う妻からの電話で、今から車で迎えに行くというその男は、照れながらも満面の笑みを浮かべていた。その男を乗せた車は小さく遠ざかると、四差路を曲がって消えた。数日間、向かいの家の車庫が空っぽであることに気づいた私は母に質問してみた。その時その男が妻を迎えに行く途中で車ごと津波に呑み込まれて亡くなったことを知った。津波が届かない数階上の建物にいたその妻は無事だった。その妻が迎えの車を待つ間と、その後の思いは私たちには到底想像することが出来ないものだったことだろう。それを聞いた時、向かいの家の明かりが数日間、何とも寂しそうに見えていた理由が分かった。
3月の凍てつく水の中で、その男は何を見て、何を感じたのか想像してみる。氷のような破壊的な水は、フロントガラスを一瞬で突き破り、全てを呑み込んだのだろう。

su_nosuke

Artist:su_nosuke

1973年宮城県生まれ。2010年より「無意味な線の集合体」をコンセプトにペンドローイングを始める。物や事の境界線・動の線に興味を持ち、無意識な線が創り出す抽象・具象画の中から潜在意識とそれを取り巻くものの形を読み解く。近年は感情の線描を軸とし、立体制作も行いながら技法や作風に拘らない表現活動を行っている。2021〜2023年 MONSTER Exhibition(東京/海外)出展、2023年 第11回 俺の作品を見れ!!(犬山)参加、藍暁に輝くスピカ(名古屋)参加、2024年 グループ展「2024年展」(大阪)参加、第2回ECA展(東京)出展。

Instagram: https://www.instagram.com/pen_drawing_black_white/