シイヤ トモフミ

ハリツクンナ 谷地の自ら歌った謡

Title:ハリツクンナ 谷地の自ら歌った謡

Material:ガッシュ、パステル、他

アイヌ民族に関する文献、『アイヌ神謡集』(知里幸恵編訳)の中の一節「谷地の魔神が自ら歌った謡“ハリツ クンナ”」という詩があり、これを絵本化した物がこの作品です。
大抵の場合、こういう「魔物・怪物退治」の類は「如何にして恐ろしい怪物を退治したか」を、退治した側からの視点や語りで伝えられているケースが殆どです。大江山の鬼達の話にしても退治した源頼光よりも退治された酒呑童子に感情移入した形式で語り継がれているものの、体裁はあくまで源頼光の武勇伝です。
ところが、この話は退治された「谷地の魔神・ニッネカムイ」の自述という形で語り伝えられており(アイヌの「ユカラ」や「カムイユカラ」と言われる叙事詩や神謡等の口承文芸は、基本的には物語の主人公が自らの話を語るという形式で歌われる)、この物語は「如何に自分が退治されたか」を「退治された側」の視点で語る話であり、こういう構成の怪物退治の話は殆どない様な気がします。
そして、もう一つ驚くべき点は、怪獣映画どころか映画すら無かった時代に「まるで怪獣映画でも見てるかの様な」文芸イメージがあった事なのです。
この二つの驚きを堪能して頂けたら幸いです。

Artist:シイヤ トモフミ Tomofumi Shiiya