西 除暗


Que BumBum
スタイロフォーム、アクリル

人は本能的に、カタストロフを願望する。カタストロフから始まる新しい世界を夢想する。
その後ろ暗い願望を叶えてくれる存在が、怪獣である。
かつて怪獣が破壊したのと同じ光景を、現実で目の当たりにしても尚、人は懲りずに新たなカタストロフを望んでいる。
今、人が壊してもらいたがっているものは何だろう?
洗っても拭いきれない、ひどく絡みつく見えない何か。
東京タワーでも大阪城でもない、その見えない何かをぶち壊す怪獣はどんな形をしているだろう。どんな物語を孕んでいるだろう。
そんなことを想像していると、目の前に巨大な怪獣が現れた。
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キ・ブンブン(大きなお尻という意味)は、縄文期に古代宇宙人が生んだ地底怪獣だ。
宇宙人はキ・ブンブンを地中に埋めた。
彼女は闇雲にマントル内を掘り進めて、やがて地球の裏側に突き抜ける。
そこで彼女が見たのは、豊かな肉体をさらけ出して情熱的に踊る、信仰の祝祭だった。
祝祭に触れることでキ・ブンブンは自分の出自を思い出す。
再びマントルに潜り、地殻をかき分けて、彼女は故郷へ戻ってきた。
しかしそこは、キ・ブンブンにとって生きづらい場所になっていた。
叫ぶべき歌を失い、踊りを禁じられた世界。
ただ、そうなったのは彼女にも原因があった。無邪気に地殻を動かしたのは彼女だったのだから。
キ・ブンブンの居る場所はここには無い。でも、地球の裏側に戻るには再び地殻をかき分けなければいけない。それはできない。彼女はどこにも行けなくなってしまった。
だから彼女は、禁じられた踊りを踊る。
生きる喜びも、生き続ける哀しみも、全部彼女の肉体に詰め込んで。
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「Que BumBum」はポルトガル語で「なんて凄いお尻なんだ!」という意味。


西 除暗
仏師。
流木や廃材といった捨てられる木に仏性を見出し、仏像を彫る。
仏教様式にとらわれず、人が何かを強く焦がれる感情から立ち表れる原始的な「信仰」の形を、シンクレティズムを通し、彫刻で具現化する。

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