Paresthesia
私の作品に登場する毛皮や剥製は「誰か」がかつて使っていたものに限られています。「誰か」が使い「誰か」が生命を奪った空(抜け殻)の存在です。これらは美しさとは程遠い、欲望と苦しみから誕生した「もの」。更に個人の愛着や愛情、美しさが付着している、とても奇妙な存在ではないでしょうか。
私は、死んで無になるべき肉体がまだ存在している、という状況に注目しています。肉体や思考がないのに体(抜け殻)だけが存在している奇妙さ。存在するのに存在していない曖昧な存在。私はそのどちらの存在でもない「もの」に、生まれていつか必ず死ぬ。という生命の儚さについて想いを重ねています。
美しさとは何でしょうか。
純粋で無垢な何も知らないものでしょうか?
人の一方的な欲望から命を奪われた動物たちはその一方的な「美しさ」の概念の標本であると思います。
無垢なる存在の悲しい犠牲者が、毛皮や剥製です。
私は死体愛好者でもないし、毛皮や実験動物を推奨していません。
宮川 慶子
2016年 東京造形大学大学院 造形研究科 美術研究領域 修了
2016年 個展「Close yet far」ガルリアッシュ(東京都)
2015年 「ペコちゃん展」平塚市美術館(神奈川県)
2014年 個展「As I pray for you and me」青森県立美術館(青森県)
2014年 奈良美智が選ぶ若手作家「PHASE2014」選抜