岩田 明

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誰しも感じたことがあるだろう。木々の幹や枝が象の足や鳥の足の形に見えることはないだろうか。自然の作り出す造形のリアルさに驚かされる瞬間である。
普段は広告ディレクターとして、デザイナーとして、時には専門学校の講師として、毎日スケジュールに拘束された状態が続いているが、十代の頃から作家としての生き方も意識し模索しながら、さまざまな創作活動にも参加している。
数年前から始めた事だが、樹脂粘土によるオブジェの制作にのめり込んでいる。とくに動物と植物が混在した「生き物=怪獣もどき」を制作している。テーマ・コンセプトは「花骸(hanamukuro)」である。過去の繁栄や支配をその形跡から見出そうとするとなかなか難しいが、私なりの創作イメージで動植物の合体生命体をオブジェにしている。
今回の出品作は「花骸」…それは、動物や植物の遺骸と言って良いだろう。ただ、遺骸となってもかっての美しい形状は「命のカタチ」として心のなかに存在し続ける。過去と未来の時空を越えて命の繋がる螺旋(らせん)に自分自身が立っているようにも思える。


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岩田 明 Iwata Akira