YUYA SHIRATORI


無量無辺鏡
紙、インク、木、ステンレス

記憶から紡ぎ出される断片的なモチーフが、無限に重なり合う。
自分はここにいるのだ と 爪痕を残す。

畏敬が神を生み
恐怖が怪を生む

人知を超えたもの
天災 人災 恐れ 恨み 怒り
言葉に表せない「なにか」

過度の情報社会が生み出す 孤独 闇

自由という名の混沌と、定められた秩序

そこからぼくらは何を選択し、何を想い生きるのか
見たことも聞いたこともあるもので 溢れかえるこの世界で。

当たり前の日常が、もう、怪奇現象じゃないの。

「日常」から生まれる 
ーの点 +の点 0の点
全ての点が、無限につながり、醜くも、美しく見える。

以下 参考資料について

・理趣経/金剛界曼荼羅/成身会
日本密教に見られる両界曼荼羅のうちのひとつ、金剛界曼荼羅。9つの曼荼羅で形成される。更にその中のひとつが、成身会(じょうじんね)。「1を囲む4」の構図が、細部及び全体に共通していることにより、同じシステムの無限の続き、一即一切を表す。1+4の構図は、ダイヤモンドの構造(1個のプラスの性質をもった原子核を中心にして、4個のマイナスの性質をもった電子が結合して結晶化)と全く同じである。つまり、わかりやすく言うと、ダイヤモンドのように固い強い意志が、宇宙いっぱいに無数に広がり、過去、現在、未来にも、いつまでもつづいていく。
目の前の些細なことが、いま生きている世界全体に繋がってるってこと。

・饕餮文(とうてつもん)
中国、殷時代(今から3700年くらい前)の青銅器に見られる文様。シンメトリーに広がる細密文様は、自然を表す雲の文、龍や祖先神、身の回りの動物を神格化した文で埋め尽くされている。悪意を持った精霊を恐れしめ、追い払おうという意図があるとされる。私はこの饕餮文が、大好きなのだ。

・M.C.Escher
曼荼羅の構図をもとに絵を描いていると、自然とエッシャーへと辿り着いた。
エッシャーの平面的構造から分類される、3つのカテゴリー、メタモルフォーシス(変容)、循環、無限への接近 を参考にさせていただいた。
「上下、左右、遠近といった基本的な概念までが、相対的で、気持ち次第で変わる存在にすぎない」
by アルバート・フロコン

・幾何学
点、線、平面。
次元なし、一次元、二次元、三次元。
理趣経による、点=宇宙、一事が万事、と共通するシステムがあると解釈する。
イスラムのとあるデザインを、そのまま作品に描かせてもらった。
格子の陰から生まれ出る星。直感的にPOPでかわいい。そして無限。
宇宙や秩序をあらわす英語comosの語源であるギリシャ語、κόσμοςには、秩序の他に、装飾、美しいという意味もある。そして、cosmosの対義語はchaos(カオス、混沌)である。

・シンメトリー
分子レベルから我々人間、そして宇宙に浮かぶ星々でさえシンメトリーの秩序に収まっている。
だがしかし、シンメトリー(対称)という概念は、アシンメトリー(非対称)と分かち難く絡みあっている。
左右対称から逸脱した生物たち(例えば片手だけ大きいカニなど)には、彼らなりの事情があるのだ。
その事情が、進化における「適応」だろう。
そして私たち人間の身体や、脳の機能。外見はシンメトリー。中身をよく見るとアシンメトリー。
完全じゃない、おおむね対称ってとこだろうか。

・自然、動植物
結局のところ、なにが一番スゴイかって、自然。
上に述べたことすべてが、ここにつまっている。
宇宙ありきの太陽ありきの地球ありきの我ら人間。
シンメトリーで、幾何学的で、文様だらけで、無言の秩序が空気のように存在する。空気ですら、ね。
生まれては死に、進化し、適応し、流れに身を委ねる。
美しく、猛々しく、凶暴で、破壊的だ。

世界の一日あたりの出生数  およそ382,351人 
世界の一日あたりの死亡数 およそ155,099人 (自殺者含む)

日本の一日あたりの出生数 およそ2,934人
日本の一日あたりの死亡数 およそ3,279人 (自殺者含む)

3.11での死者数 15,894人 行方不明 2,562人 (2016.02.10調べ)

これはあくまで人間の数。
無量無辺の生命が毎日死んで、毎日生まれている。
無量無辺の感情が、毎日歓喜し、毎日絶望の中にある。

それが、当たり前の日常を包む、現実だ。

参考資料及び文献:

・理趣経/金剛界曼荼羅/成身会の構図
 理趣経曼荼羅 元性筆 1171年(個人所蔵)
 密教の核心 図説「理趣経」入門 すずき出版

・中国・殷王朝の青銅器及び饕餮文様
 館蔵 殷周の青銅器 根津美術館

・M.C.Escher図録等
 M.C.ESCHER The Graphic Work by TASCHEN
 エッシャーの宇宙 朝日新聞社

・幾何学、シンメトリーに関する文献等
 幾何学の不思議 遺跡・芸術・自然に現れたミステリー 創元社
 シンメトリー 対称性がつむぐ不思議で美しい物語 創元社

・自然、動植物図鑑
 自然大博物館 小学館



YUYA SHIRATORI
1986  神奈川県生まれ
2006  アメリカ、ボストンへ留学。Art Institute of Boston, Massachusetts college Art, にてデザイン、彫刻、版画、空間演出を学ぶ。精神不安により中退、帰国。
2007  留学中、タイの彫刻工房へ短期滞在し、彫刻、竹細工を学ぶ。
2012  帰国後、大手アジアン雑貨の企業にて、デザイン、仕入れを通し、アジア各地の 民藝、フォークロア、工房と繋がる。
2017  再び精神不安に。自身への治療と称し、表現の世界への挑戦を再開する。

展示
2007 「Water VIgil」Boston Center for the Arts,Boston, MA
「GLOVEBOX」Goody Glovers, Boston, MA
    「International Scholarship Exhibition」Art Institute of Boston, Boston, MA
2008 「Materical Meditation」New Art Center, Boston, MA
「Nature & Balance」Arcenal Center for the Arts, Watertown, MA
2009 「Facing East」Dana Art Gallery, Wellesley, MA
    「旧白鳥邸デストロイPROJECT」横浜、神奈川
    「LOOP」大倉山記念館、神奈川
2010 「septa raga – ナナツノイロ」横浜中華街、神奈川
2011 「DESIGN FESTA vol.33」東京ビッグサイト、東京
    「CHOICE」麻心カフェ、神奈川
2012  「GEISAI#16」東京流通センター、東京

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