藤森 太樹


自意識という名の怪物
水彩紙、ペン、透明水彩

“自意識”とは一体何なのか、なぞと思う。

それは人が個人として独立した意識を持つ以上必ず各々の内側に存在するものなのだろうが、個人のそれが社会性の中で強く発現した場合、大概に於いて他人に疎まれたり、蔑まれたり、無視されたり、或いは自意識の肥大化した阿呆だと思われたりする。

しかもややこしい事に、個人の精神内部に存在すると思しき自意識が何によって構成されているかと考えれば、結局のところそれはその個人が育ってきた環境であったり、関わってきた人間であったり、見聞きしてきたあらゆる外的要因、つまり外側から与えられた無数の言葉達なのだからまったく訳が分からなくなってくる。

兎に角、我々が平生日常生活の中で他人にどうこう思われない為には、個人の中で肥大化しようとするそれを制し、如何に自分と社会との公約数を取っていけるか、といったところに集約するのではなかろうかと思う。

だがしかし自意識というのは厄介なもので、いくら自制しようとも間隙を縫うようにして膨張、表出、増殖し、時に手に負えない程になるものである。

私には、突如宇宙から来た、とか、何百年も地底に眠っていた、とか、夜になると墓から出てくる、とか、部屋の暗闇に潜んでいる、などといった類いのものより、人間の頭の中でどす暗く渦巻いているのであろう“それ”の方が余程、正体不明で異形の“怪物”に思えてならないのである。



藤森 太樹
1988年、兵庫県生まれ。
顔料インクのペンを主な画材とし、副次的に透明水彩や色鉛筆を用いた細密画を制作している。

Web http://daikifujimori.com/